オブザーバー座談会①一括査定サイトの実態とは？

一括査定サイトの実態や不動産業界のことついて「街の不動産ポータル TUNAGERU ツナゲル」のサイト運営に”オブザーバー”としてご協力いただいている不動産会社代表のみなさんに、ざっくばらんに語っていただきました。

参加メンバー

東京都練馬区
株式会社ハウジングサクセス代表
金子徳公
愛知県豊明市
グレイス不動産株式会社代表
鬼頭克郎
群馬県伊勢崎市
株式会社クリエートハウジング代表
角田秀則
街の不動産ポータル TUNAGERU
ツナゲル運営責任者
斎藤達哉(インタビュアー)

一括査定サイトや高値取りについて教えてください

角田	一括査定サイトは複数の不動産会社にまとめて無料査定依頼ができるサービスです。依頼するお客様は無料ですが、不動産会社側は査定依頼1件につき1万円～2万円ほどの手数料をサイト運営側に支払う仕組みです。そこで手数料を払った分、売却依頼を取ろうとしつこく電話営業をしたり、高値取りといって、他社より高い査定額を提示して自社を選んでもらおうとする不動産会社が出てくるわけです。
鬼頭	一括査定を使うと複数の会社が査定額を提示するので、何も知らないお客さんは金額で比較してしまいがちでしょ。だから高い査定額を出してくるんです。でもこの高値取りにあってしまうと相場より高いのでなかなか売れず、時間がかかって結局は価格を下げることになるので、売主さんの損失が本当に大きいんですよ。
金子	先日も紹介からお客さんが相談に来て、僕が出した査定額は2800万円。そこで高額査定の説明もしっかりして「わかりました」となったんです。でも結局、3300万円の査定額を出した不動産会社に依頼したと。相場より1割以上も乗せて売れるはずないでしょって思ったけど、某大手不動産会社でしたから「高く取れ」って上司に言われてるんだろうなと。

高く取らなきゃいけない理由が大手にはあるってことですね？

金子	不動産会社は売主様から物件を預かれば仲介手数料を得ることができるので、高値取りしてでも「とにかく預かりたい」「取ればどうにでもなる」って業者が少なくないのが事実。
鬼頭	他社に行かれないよう高い査定額を出すっていうのは、お客さんの「なるべく高く売りたい」という心理を利用してるんですよ。でも実際、売れないから半年とか1年かけて売れる価格まで下げることになってしまう。
角田	僕はいつも言うんだけど、車の査定は買取りだから高い方がいいんです。でも不動産の売却は仲介で、車の査定とまったく別もの。不動産の査定はあくまでも売出価格で、実際に売れる金額じゃないということを知ってほしい。高値取りした不動産会社は、売れなくて値段を下げたところで痛くもかゆくもないんです。
鬼頭	こういう会社はお客さんのことは考えてない。とにかく他社に勝ちたい、自分が儲かればいいって業者の思惑のみ。そこにお客さんへの思いはないよね。
角田	高値取りする不動産会社の中には、物件を預かるだけ預かって100～150件ありますなんてところもある。でもそれって売れてないってことだから、まともな不動産会社なら恥かしいこと。で、たいがいそのような業者のホームページを見ると、相場より3割も高い価格で出てるんですよね。

金子	数さえ預かれば、どれか売れて仲介手数料が取れるでしょうって考えだよね。適正な金額ならネットに出る前に自社のお客様に紹介してすぐ決まることもあるし、ネットに出ても順調に売れていく。100～150件はありえないなぁ。
鬼頭	最近は高値取りするのが超大手だけということでもなく、2番手クラスの会社や、地元のチェーンなんかでも高く出してくるところが増えています。ただ、いずれにしても一括査定を使うと、お客さんは一番高い所を選んでしまいがちな現実がありますよね。
金子	一括査定を受けて、やりとりをしてみたら信頼できそうだから査定額が2番目、3番目に高い会社に依頼するってことはあると思うんです。でも10社いて低い査定額の方に依頼するって人は基本いない。先日、査定依頼を受けてやり取りしていた方から、「対応が丁寧でよかったのですが、査定額が下から2番目だったので上位3社で検討します」という連絡をいただいて。それはそれで仕方ないんだけど、下から2番目って言われたことより僕が出した査定額でそれなら、上位3社はどれだけ高く出したんだろう　って。
角田	その金額では売れないんだけどね…

しつこい営業や高値取りに合わないためにはどうしたらいいのでしょう？

金子	まず一括査定サイトに安易に登録しないってことですよね。売る気がない段階で個人情報を出して登録しない。とりあえずいくらか知りたいという段階なら、このサイトのように個人情報を登録しなくても使えるものにした方がいい。そしてすでに登録してしまって、しつこい営業に悩んでいる、失敗したと思っているなら、一括査定サイトの運営元に削除依頼や断りの連絡を入れるのがいいと思います。
鬼頭	高値取りに合わないためには、査定額だけを見て選んでしまうのではなく、その価格を算出した根拠や、実際にどんな販売活動を行ってくれるのかなども納得いくまでしっかり確認して、信頼できる不動産会社を選ぶようにしてください。
角田	一括査定サイトってすべての不動産会社が登録しているわけじゃないんです。紹介やリピーターで十分営業できている会社は、手数料を払ってまで売却依頼を取る必要がありせんから、一括査定サイトだけで依頼する会社を探そうとすると、地元密着の中小不動産と出会えない可能性もありますね。要は「とにかく売却依頼を取りたい」と思っている「強欲な不動産会社」が多いということです。

皆さんは売却相談にどのような対応をされてるのですか？

鬼頭	僕はお客さんには、高く出すと10回のうち2回くらい売れるかもしれない。宝くじみたいなこともなくはない。それを分かった上で高く出すことにかけるかどうか。でも売れなかったら金額を下げないといけないし時間もかかる。そういうことをきちんと説明した上で、どうしたいか聞くようにしてる。
角田	僕も適正価格のことをしっかり説明しますね。以前、僕が出した査定額の倍の価格で売り出したいというお客さんがいて、僕は無理だから断った。その物件は結局、徐々に値段を下げながら7年かかって最後、僕の査定額より低い価格で売れてましたけど。僕は「僕の出した査定額で納得ができないのであれば、他社さんに行ってもらって大丈夫ですよ」と伝えている。でも8割はうちに来てくれます。
金子	もちろん高く売ろうという努力はするし、高く売らなきゃいけないし、高く売れるのがいいと思う。でも売れない高いと、高く売れるのは違いますからね。

鬼頭

例えば、最低2000万円は確保しましょうね。で、チャレンジして2300万円で出しみて、結果2200万円で売れたら「グレイスすごいね」と思ってねと。この2000万円って売れていくだろうという金額をお客さんが分かっている上で高く出すのと、何も知らなくて2300万円を「うちの家、この金額か！」と思って出すのと大きく違う。相場をわかった上で高く売り出すのはいいんです。

金子

高く売りに出すことと、高く売れることは別なので、根拠なく売れると思って高く出しても無理なんですよ。ただやっぱりお客さんには「少しでも高く売りたい、売れるんじゃないか」っていう気持ちがあるので、適性価格っていうのはなかなか伝わらない所がありますよね。1回、経験すると分かるでしょうけど、そういうわけにもいかないから適正価格、売れる価格ということをもっと伝えたいし、早く知ってほしい。でも、これはこれでまた業者の思惑と思われてしまう部分もあるかもしれないのが悲しいですよね。

不動産会社を選ぶのは難しいなと思ってしまいますね

角田	悲しいことに頭の中は「金、金、金！」自社の利益が一番、という不動産会社も多いのが事実。お客さんのことを本当に考えてやっている不動産会社は、実は1割くらいかもしれません。今の状況で行くと不動産業界は沈没していく。もう破綻していると言っていいかもしれない。
鬼頭	不動産をわかってない業者も多いよね。「大丈夫？」って人が独立して、話してみるとやばいなって。不動産業を全然わかってないとか、仲介を知らないなっていうのが本当に増えている。
金子	ちゃんとしている会社が少ないから、不動産業界が一向に変わらないっていう部分もありますね。
角田	アメリカでは不動産を売買する時、不動産エージェントに依頼するんです。不動産会社じゃなく、エージェント個人の実績や口コミの評価を見て取引を任せるエージェントを探す。だからお客様のためにしっかり仕事をするエージェントでなければ、選んでもらえないわけです。日本もそんな風になっていくといいんですけどね。

このサイトを利用するメリットは？今後どうしていきたいですか？

鬼頭	売却する時に、ここを見たら変な不動産会社に行かなくて済むと思ってほしいです。ここにくればいい不動産会社、いい営業マンに会える。
金子	お客様のことを本当に考える不動産会社を紹介しているサイトなので、売却を検討していて過去に大手でダメだったとか、イヤな思いをした人、不動産会社がイマイチ信用できないと思う人にこそ、ここに来て見てほしいですよね。個人情報も必要なくて、まず自分で相場を調べることができるし、売却のことはもちろん、不動産会社のことも知ってもらえる。このサイトで不安が解消できる人を選んでほしいです。
角田	このサイトを運営していくことで、少しでも残念な思いをする売主さんを減らしたい。売主さんの立場に立った仕事をして、多くの人に信頼されて高い評価をいただける不動産会社だけが集まるサイト。そういう価値を作っていきたいですね。不動産取引の仕組みや売却のノウハウやポイントだけでなく、不動産業界の内情なんかも包み隠さずどんどん伝えていきたいです。僕たちの志に相反する不動産会社から噛みつかれるくらいドンドンね。