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「正直不動産」原案者 夏原武氏インタビュー

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「正直不動産」は、2017年から小学館ビッグコミックで連載中の漫画で、不動産業界の知られざる世界とリアルな現実を描いて人気を得ています。2022年にはNHKで連続ドラマ化され、大きな話題になりました。「正直不動産」ならびに「クロサギ」の原案者でもある夏原武氏に、TUNAGERU運営とオブザーバーとしてご協力いただいている不動産会社代表の皆さんで、不動産会社の本来あるべき姿や、消費者が不動産会社を見極める際のポイントなどについてお伺いしました。

 

不動産業界を取り上げたきっかけは

私は元々ルポライターで、別冊宝島などの雑誌で不動産に関わる話はもちろん、建設業、ゼネコンの話などを扱っていて、その頃から興味があったんです。不動産というのは関わらない人は世の中に一人もいないのに、その実態がとても分かりづらい。今は昔より悪徳業者はだいぶ減っていると思いますが、それでも囲い込みとか色々な問題があります。みんなが関わるんだから、みんな興味を持ってくれるだろうと。 それから「クロサギ」もそうですが、お金が関わると人間って非常に本質が出てきます。不動産は扱う額が大きいので、買う人も売る人も、そして当然、間に入る仲介業者も本音が非常に出やすくて、その人間の本性が現れるようなところにお金のドラマっていうのがあるので、その意味でも面白いんじゃないか。考えてみたら不動産を正面からやってる漫画ってないよね、ということで始めたんですね。いざ始まってみたら、ぜひ協力したいと言ってくれる真面目な不動産業者さんが想像していたよりも多くて、とても嬉しかった。つまり、変わろうとしている人たちがこんなにいるんだと。

読者や視聴者からはどういった反響がありますか

「知らなかった」というのがものすごく多いです。「知らなかった」「そんな風になっていたんだ」っていう声です。その次に「買う前に読んでおけばよかった」、「借りる前に読んでおくべきだった失敗した」という声も多い。やっぱり不動産業界というのはブラックボックスで、外から見てるとわからないんです。不動産の取引は特に売買の場合は一回勝負なのに、こっちは素人で相手は百戦錬磨のプロっていう非常にアンバランスな関係があって、それを知らないまま家を売ったり買ったりする。でも裏にこういう事もあるんだよ、というのを「正直不動産」で見て、「そういえば、こういうことあったわ」みたいなことを感じたって人がすごく多いですね。

 

一般の人は不動産の知識を得る機会がないです

売却なんかでも、大手ってわざと高い査定額を出してきて、最終的に下げていくわけですよね。そういうカラクリみたいなものが消費者に伝わりきってないと思います。「正直不動産」ではどちらかというと大手が悪役として出てきますが、やっぱり地域密着というのが不動産屋の本来の姿で、たとえば知り合いが家を借りたいよってなると、「あそこのオヤジ知ってるから行こう」とか、大家さんから見ても「おじいちゃんの時からつきあってます」みたいな不動産屋であるべきなんです。でも大手にはそういう発想がそもそもなくて、うちは網を投げてかかったら引っ張ればいい、という考えです。だから1つの街でずっと長くやっている街の不動産屋さんというのは、本当はもっと信頼が高くなければならないし、「まずそこに相談しよう」という風になるべきなんです。街の不動産屋さんは地域の方とのコミュニケーションを、もっともっと増やしていくといいと思います。

気軽に相談したり、聞けたりするといいですね

新たに街に来る人もいれば出ていく人もいる、高齢で相続がどうなるかわからないって困っている人がいる。みんな不動産の色んな悩みを抱えているわけですよ。そこで、たとえば「無料で相談に乗りますよ」とか、「売るとか買うだけじゃなくても困ったことがあったら話にきてください」みたいなことをやるといいですよね。街の人を集めて、そこで「正直不動産」の話でも出してもらって、「実はこれってこういうことなんですよ」という話をするのでもいいと思うんです。地域との密着性のある活動を増やしてほしいです。 そういう日頃からの密接な関わりがあって、それが積みあがっていくと「じゃ、ちょっと行って相談しよう」という関係性ができます。長年のお付き合いとか関係性がないから、「いざ、売ろう」という時に、「大手に…」となってしまうわけです。ひとつの地域で深くやって人間関係を密にして、街の人たちの信頼を得ていくことで、「不動産と言ったらあそこだよね」という風に出来るんじゃないかと個人的に思っています。

 

たしかに街の不動産会社だからこそ出来ることですね

僕は取材をしていて「不動産業って一生懸命マジメにやったら、こんなに面白い商売はないんじゃない?」って思う時があります。他人の人生に関わる商売で、その住まいは単なる家ではなく、人生の一部がそこから生まれていくわけじゃないですか。何とかこの土地を売らないと、って人に買い手を見つけてあげて感謝され、感謝された上にお金も儲かるんです。これ漫画で永瀬(「正直不動産」主人公)も言ってますけど、本当はそういう楽しい仕事のはずなのに、一方で「何でもいいから売っちまえ」っていう業者も相変わらずいて、そういう業者が目立つ広告をバンバン打つから、不動産屋なんてそんなものだって思われてしまう。「どうせだますんでしょ」みたいな悪いイメージ。だから自分の身内に売るつもりで対応したらいいですよね。親身になるってそういうことじゃないですか。そこから感謝が生まれて、いい口コミが生まれて、客が客を引っ張ってきてくれるようになります。業界の体質や古い慣習など色々な問題はあると思いますが、皆さんのような不動産会社から出来ることに取り組んでほしいですね。大手ブラックな会社が伸びてはいかんのですよ。絶対に。

消費者側はどこを見て不動産会社を選べばいいのでしょう

たとえば「正直不動産」の舞台は吉祥寺で、確かに大手の店舗もありますが、それと別に地元で長くやってる不動産屋さんってあるわけですよ。だからホントにそこに住みたいなら、そういう不動産屋さんに行かないと。街のこと一番知ってるんですから。 今はポータルサイトもありますが、そこで見えるのは家賃や価格です。ウィキペディアと同じで、我々も物を調べる時にウィキペディアを見ますけど、それだけで本は書かないし、それをやったらダメになってしまう。不動産も同じで、ポータルサイトだけ見て、「よし」ってことはありえない。あれを入り口にするっていうのは決していいことじゃないんです。 最近はどこに住みたいのか ってことが明確にならなくなってきています。本当は、まず住みたい街があって、そこでどういう家にするかだと思いますが、「この値段だとこのエリアだから、まぁいいんじゃない」とか「本当はあの街がいいけど、値段的にここでいいか」、みたいに順番が逆というか、住みたい場所が妥協になっているんです。だから僕はそういう意味で、入り口が違うんじゃないのと。まず住みたい街へ行ってみましょうよと、そういうことはよく言います。

 
 

そして地元で長くやっている不動産屋さんに行ってみる

僕自身もまず住みたい場所を考えて、そこで長年やってる地場の不動産屋さんに行くと思いますよ。今まで仕事場を借りる時もそうして選んでいたので、もちろん予算の折り合いは考えますが、でもまず場所を決めないと進まないというのが僕の考え方。 あとはクチコミ。不動産屋さんって一番大事なのは口コミですからね。「自分の友人知人にどんどん声をかけて最近買った人を探して、その時どうだったか聞きなさい」と。それで「もし地域が合致するなら、そこに頼めばいい。実際に経験している人に話を聞くのが一番いいよ」っていう話もよくします。一人一人と付き合ってくれるのって地場の不動産屋ですし、そのつながりこそが一番、住む人にとって安心なんです。住んでから聞きたいことって絶対に出てくるはずなので、それをちゃんと受けてくれる不動産会社がいいです。 「いい不動産営業にどうしたら会えますか」と聞かれることもあるんですが、それは僕も分からないけど、「少なくとも地場密着の不動産屋さんに行くのが第一歩じゃないの? それをやってから考えたら?」ということはアドバイスしますね。

 
 

いい不動産営業ってどういう人だと思いますか

難しいですけど、基本はお客さんのペースに合わせてくれる人ですかね。ダメな不動産営業って、「この客、いけるんじゃないか」と思ったら、やたら電話をかけてきたり、マイルールを押し付けてきたりする人も多くて、それでけっこう悪い印象を持っちゃうんですよね。あくまでもお客さんのペースに合わせてくれる人がいいです。 それから、「何が我慢できますか?」って聞いてくれるような営業の人。つまり十全の物件なんてないので、どこかは譲らなきゃ決まらないんですよね。だからそこを最初に聞いてくれる人っていうのは、信用していいんじゃないかと思います。「任せてください!」じゃなくて、「どこだったら譲れますか。距離ですか、広さですか、高さですか、周辺環境ですか?」「そこを譲れるなら、こういう物件がありますよ」といった順番で話をしてくれる方が安心します。「確実にあなたのほしい物件があります」なんていうのは嘘ですから。そんな物件あるはずがない。いかに譲れるかが勝負なわけで、不動産営業って売れなくなりそうなことは言いたがらないけど、そこをあえて言ってくれるような人だと、「信頼してもいいかな」と思います。それから、つまらない質問にもちゃんと答えてくれる人とか。めんどくさそうにされるっていうのも結構多いです。あと、何をきいても「大丈夫です」っていう人は、鼻から相手にしちゃダメですね。基本はマイルールを押し付けない、あえて不利なことを最初に言ってくれる人。この2つだけでも押さえていくと、そんな大ハズレにはならない気がします。

 
 

漫画「正直不動産」は、今後もまだまだ続いていきますか?

不動産業界はネタの宝庫ですから。協力してくれる業者さんも増えていてありがたいです。漫画自体はフィクションで、そもそも「嘘がつけない」なんていうのはフィクションです。でも、中で行われていることはどれだけリアルにやるか。そこで嘘をやっちゃうと何の意味もなくなるので、法律を都合よく解釈するとかもできないし、裁判でどうだったと言ってもそれだけではダメで、やっぱり現場の実態です。現場で働いている仲介の人がどんなことに直面したとか、どういうトラブルがあってどう解決したか、みたいなことは不動産業界の方の協力がないと、リアルさが欠けちゃうんです。話は作れるけど、「よくできてるね」で終わってしまう。本職の方が読んでも「あるよね」って共感が得られると嬉しいですし、基本は楽しく読んでいただけたら。 皆さんには地元密着で今後も頑張っていただいて、ぜひネタを。質の悪い業者の話でもいいですし、今後もご愛読いただくとともに、ご協力いただけると大変助かりますね。