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住宅ローンの残った家を売る方法とは?パターン別の手順や注意点を解説
▼「家を売るときの基礎知識まとめ」については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
住宅ローンが残った家を売るおもな理由
住宅ローンを利用して家を購入した時には、将来の資金や返済計画などを踏まえて契約した人がほとんどです。ところが、住宅ローンは一般的に最長35年と、長い期間をかけて返済していくことになります。長い住宅ローン返済中に、ライフスタイルの変化によって家を手放す必要が出てくるケースもあるでしょう。住宅ローン返済中に家を売るおもな理由について紹介します。
元の場所に戻らない転勤や引越し
住宅ローンを利用して家を購入後、転勤や親の介護などを理由に引越す場合もあるでしょう。元の場所へ戻る可能性が低いなら、住宅ローンが残っている家でも手放し、引越し先に新しい住居を確保した方が良い場合が多くあります。
資金調達や資金繰り
子どもの教育費用や事業費用、介護費用、老後の生活資金などでまとまったお金が必要になったとき、または住宅ローンの支払いが苦しく、資金繰りを見直したいときなど資金に関する理由も、住宅ローンが残った家を手放す理由のひとつです。
ライフスタイルの変化
子どもが生まれたため、手狭なマンションを手放して広い家に買い替えたい、逆に子どもが全員自立したため、一戸建てではなくコンパクトに住めるアパートやマンションへの住み替えがしたい、老人ホームや介護施設への住み替えやほかの家族との同居のため住む人がいなくなる、相続する人がいないなど、ライフスタイルに関する理由もあります。
いずれの理由も特別なことではなく、誰でも起こりうる可能性があります。住宅ローンの残った家を売ることに対して罪悪感を覚える人もいるかもしれませんが、珍しいことではない、という点を踏まえて行動しましょう。
▼家を売る理由については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
家を売るには住宅ローンの完済が必要
住宅ローンを利用して家を購入したとき、金融機関側の権利として担保にあたる「抵当権」が建物と土地に設定されます。抵当権を設定するのは、万が一住宅ローンの返済が滞ってローン残債を回収できなくなった場合、建物と土地を競売にかけて金融機関側が住宅ローン残債を回収するためです。住宅ローンの契約締結日に、住宅ローンの設定登記が行われます。
基本的に抵当権が設定されたままの家は売却できません。抵当権が付いたままの不動産物件は購入者が嫌がるため、不動産の売買契約では抵当権の抹消を条件としていることも多いです。そのため、住宅ローン返済中の家を売りたいときには、住宅ローンを完済し抵当権をなくさなければいけません。
抵当権の抹消手続きは住宅ローン完済後、金融機関から郵送される書類を持って法務局で自分で手続きをするか、司法書士に依頼するかで行います。
抵当権抹消をふまえ、住宅ローンの残った家を売る場合は、家を売ったお金で住宅ローンを完済する必要があることを覚えておきましょう。
ローンが残った家を売る時にまずやるべきこと
住宅ローン残債を調べる方法
住宅ローン残債は、以下の方法で確認できます。
- 金融機関から発行される返済予定表を見る
- 金融機関から郵送される残高証明書を見る
- インターネットで残高照会をする
- 金融機関へ問い合わせをする
住宅ローン契約時に発行される返済予定表から、どのくらい住宅ローンが残っているかが分かります。ただし繰り上げ返済を利用している場合は、時期と残債にずれが生じるので注意しましょう。
直近の年末時点での住宅ローン残債を調べたいときには、金融機関から毎年10~11月ごろに郵送されてくる残高証明書を見れば確認できます。ただし、金融機関によっては残高証明書の郵送手続きが必要です。
インターネットバンキングなど、Web上で残高照会などの確認ができるサービスを提供している金融機関の場合、リアルタイムでの住宅ローン残債を気軽に確認できます。インターネットサービスを提供していない金融機関の場合は当然利用できません。
現時点での詳細な住宅ローン残債を調べたいときや、インターネットサービスに対応していない金融機関の場合、直接金融機関に問い合わせましょう。
家のおおよその売却価格を調べる方法
家の売却価格の正式な金額は、買主との不動産売買交渉によって決まります。けれども、売却前におおよその売却価格を調べることは可能です。おもな方法は以下の通りです。
- レインズマーケットインフォメーションを利用する
- 不動産会社へ査定を依頼する
レインズマーケットインフォメーションとは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理している不動産流通標準情報システムです。北海道から沖縄まで日本全国の実際に売買が行われたさまざまな物件の成約価格等、各種取引情報を検索できます。住んでいる都道府県と地域で、売却したい家と似た条件の物件の売却価格を参考にすると、おおよその売却相場が把握できるでしょう。
不動産会社へ査定を依頼すれば、おおよその売却価格が分かります。査定は無料で依頼できます。1社だけでなく、複数の不動産会社へ査定を依頼し、最低値と最高値の平均値を出すと、売却価格の目安が分かります。但し、一括査定サイトなどを安易に利用すると無用なやりとりや、各社営業からの大量の連絡などが発生し対応が大変になるケースもありますので、信頼のおける地元の不動産会社にひとつひとつ査定を依頼することをおすすめします。
レインズマーケットインフォメーションと不動産会社への査定を併用し、価格を比較するのも有効です。
▼家を売るときの査定については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
売却価格で住宅ローンを完済できる場合・できない場合で手順や方法が異なる
家の売却価格が住宅ローンの残債を上回るとき(アンダーローン)には、住宅ローンを完済するかたちですっきりと家を売却できます。一方、家の売却価格で住宅ローン残債が完済できないとき(オーバーローン)は住宅ローンが完済できず抵当権も残ります。「住宅ローンのある家がオーバーローンだった場合、売却できない?」と考える人もいるかもしれませんが、住宅は購入直後から年数の経過とともに価値が下がっていくため、オーバーローンとなってしまうのは珍しくありません。オーバーローンでも住宅ローンの残った家の売却はできます。
次に、アンダーローンだった場合、オーバーローンだった場合それぞれの住宅ローンが残っている家を売る手順や方法を解説します。
アンダーローンの場合の家を売る手順や方法
アンダーローンの場合は所定の手続きを踏めば、問題なくスムーズに住宅ローンの残った家が売れることが多いです。アンダーローンの場合の家を売る手順や方法について解説します。
売却時に必要な諸費用を把握しておく
家を売却するときには、諸費用がかかります。家の売却金額が住宅ローンを上回ったため完済はできるものの、諸費用分の資金が足りない、という場合もあるでしょう。事前に何の費用がかかるかを知った上で資金計画を立てることが重要です。おもな売却時に必要な諸費用は以下の通りです。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消登記にかかる費用
- 売却時必要に応じて支払う費用
- 引越し費用
仲介手数料は売却を依頼する不動産会社に対して支払う手数料です。売却が成功した際の成功報酬として支払われます。上限は売買価格の3%+6万円+消費税です。買主と売買契約を結んだ段階でまず半額を、物件を引き渡した時点で残りの半額をと、2回のタイミングに分けて支払われるのが一般的となっています。
売買契約書には印紙税がかかります。印紙税は、家の売却金額に対応する金額の印紙を準備し、売買契約書に貼ることで支払います。売買価格が1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円、5,000万円超1億円以下の場合は3万円です(2024年3月31日まで。税率軽減措置が撤廃される予定の2024年4月1日以降は、税率の引き上げにより金額が変動する可能性あり)。
また住宅ローンの残った家を売却するとき、家の抵当権を抹消するための「抵当権抹消登記」の費用が必要です。登録免許税2,000円(建物ひとつあたり1,000円と、土地ひとつあたり1,000円)と、司法書士への報酬を合わせて2~3万円が相場となっています。なお所有権を買主に移転する「所有権移転登記」の費用は買主が支払うため、売主側の負担にはなりません。
家を売却するにあたり発生する費用もあります。廃棄物の処分費、敷地の測量費、建物の解体費、ハウスクリーニング費などです。費用の目安は不動産仲介会社に確認しましょう。
さらに、家を売却したあと新居へ引越すときの引越し費用も考えておきましょう。なお、売り先行、買い先行(詳細は後述)によって引越しの回数が異なります。
▼家を売るときの費用については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
媒介契約、売買契約と抵当権抹消手続きを行う
家を売る不動産会社を決めたら、媒介契約を結んで家の売買の募集をスタートさせます。買主が見つかったら、売買契約を結びます。住宅ローンが残っている家を売る場合は、売買契約締結後に決済と抵当権抹消手続きを同時に行うことになります。
一般的に家は住宅ローンを完済してからでなければ売却できないため、家を売ったお金をローンに充てることは不可能と考える方も多いでしょう。しかし、買主、売主、金融機関の住宅ローンの担当者、司法書士が同席することによって、ローン完済と売却とを同時に成立できます。
「ローン完済後には当該物件が買主のものになる」という内容の登記申請書類が司法書士によって確認された後、金融機関により買主への融資が実行され、売主の口座に売買代金が振り込まれます。振り込まれた売買代金で住宅ローン残債を完済し、司法書士が抵当権抹消登記および所有権移転登記を行って、手続きは終了です。抵当権が抹消された登記書類は、後日郵送などで送られてきます。
アンダーローンならリースバックも選択肢のひとつ
リースバック(セール・アンド・リースバック)とは、住んでいる住宅を売却して現金を受け取ったあと、賃貸物件として今の家に住み続けられるサービスです。住宅ローンの残っている家でも、アンダーローンならリースバックが利用できます。 リースバックには以下のメリットがあります。
- 今の家に住み続けながら教育費や事業資金、老後の生活費などの資金が調達できる
- 買戻し特約をつければ将来家を買い戻すことができる
- 今の住所を変えずに済む
- 家賃を支払っている限り契約期間中に退去させられることはない(貸主、借主間で合意に至らず再契約できない場合を除く)
一方で、リースバックには以下のデメリットもあります。
- 家を売却することになるため自分名義の資産を失う
- 売却価格が一般的な相場よりも安くなる可能性がある
住宅ローンの残った家を手放すことになった理由によっては、売却よりもリースバックが良い場合があります。メリットやデメリットを踏まえ、大切な家に住み続けたいならリースバックも選択肢として考えておくと良いでしょう。
もしも売却で利益が出た場合、所得税は発生する?
住宅を売却することで利益が出た場合、翌年の確定申告にて「譲渡所得税」を支払うことになります。ただし、利益に該当するのは「住宅の元値」から「現在の住宅の売却金額」と「売却するためにかかった費用」を差し引いたものです。住宅は減価償却によって購入してから年数がたてばたつほど資産価値が下がっていくため、家を売却するときに元値以上に売れることはほとんどありません。さらに、自宅を売却した場合は利益が3,000万円以下であれば譲渡所得がかからないという「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用となります(適用の要件あり)。
以上のことから、都心の一等地など購入前と購入後で地価に大きな上昇があった場合を除き、アンダーローンで住宅売却に利益が出ても所得税が発生する可能性はほとんどありません。
オーバーローンの場合の家を売る手順や方法
家の売却価格が住宅ローンの残債を下回るオーバーローンの場合、アンダーローンの場合とは異なる手順や方法で家を売却しなければいけません。オーバーローンの場合の家を売る手順や方法を順に解説していきます。
諸費用の確認、および売買募集後不足資金をどうするか考える
家の売却時にかかる諸経費の把握や、不動産会社と媒介契約を結び家の売買募集をするまでの流れは、アンダーローンの場合と同じです。まずは家の売却価格を差し引いたあと、どのくらい住宅ローンが残るか(オーバーローンとなる金額)を把握します。
基本的にオーバーローンとなった分は分割返済できず、一括返済のみとなる点に注意しましょう。家の売却のために抵当権を抹消している=金融機関にとっては無担保でお金を貸しているというリスクの高い状態となります。金融機関との交渉によって分割返済が認められる場合もまれにありますが、原則オーバーローン残債の分割返済は認められていないことを覚えておきましょう。不足している資金をどのように対処するかによって、今後の手順や方法が異なってきます。
手持ちの資金で補填する
オーバーローンとなった分を貯蓄など手持ちの資金で補填できる場合は、アンダーローンと同じ手順を踏みます。アンダーローン分を一括返済し、買主と売買契約を交わし、決済と抵当権抹消手続きを同時に行って終了です。
ただし、生活費など手元にいくらかの資金を残すようにしましょう。貯蓄とオーバーローン分がほぼ同額だった場合は、慎重な決断が求められます。なおオーバーローン分を準備するために親族などから借りる場合、借用書を書くなど「借りたお金である」ことの証明が必要です。もらったお金と見なされると、贈与税が発生してしまいます。
銀行や消費者金融からカードローンなどの無担保ローンを利用して返済する方法もありますが、今度は高い金利で借りたお金を返済する必要があります。いずれも慎重に考えてからの行動が重要です。
住み替えローンでローンをまとめる
ほかの家に住み替える場合には、住み替えローンを利用してローンを1本化する方法があります。住み替えローンには、住宅ローンを完済できなくても住み替えができる、利用していた住宅ローンよりも金利が低くなる可能性があるのがメリットです。
一方、住み替えローンは「売却する家の抵当権の抹消と、購入する新居の抵当権の設定を同時に行わないといけない」という条件があります。つまり住み替える家を購入する日と、今まで住んでいた家を売却する日が同じでないと利用できません。住み替えと家の売却のスケジュール管理が難しいため、不動産会社に協力してもらえないと利用できないことがあります。
住宅ローンを1本化するにあたって住み替えのための住宅ローンが上乗せになり、返済金額が増える(融資額が大きくなる)ため、延滞の履歴有無など審査の基準が厳しくなり、通りにくいというデメリットもあります。とくに、売却する家の住宅ローン契約時に与信いっぱいまで借りている、返済の遅延を起こしているなどの場合は、住み替えローンの審査に通らない可能性も高いでしょう。
任意売却をする
住宅ローンが返済できなくなり家を手放す場合、家が競売にかけられるか、債務整理である自己破産をするかの選択肢しかないと考える人もいるかもしれません。オーバーローン分(債務)を一括返済できなくても金融機関の合意を得て抵当権を外し、不動産会社へ売却を依頼できる、任意売却の方法があります。
任意売却には以下のメリットがあります。
- 差し押さえがないため住宅ローンを滞納したことを周りに知られにくい
- 競売よりも相場に近い価格で売却できる可能性がある
- 残ったローンは一括返済ではなく分割払いすることも可能
- 諸費用を現金で用意しなくてもいい
競売や自己破産よりもメリットが多い任意売却ですが、当然デメリットもあります。
- 銀行が合意をしないと利用できない
- 任意売却が得意な不動産会社に依頼しないと売却できない可能性がある
- 滞納した記録が信用情報機関に残るため、融資を受けにくくなる
- クレジットカードや携帯電話の契約可否に影響がでる
- 競売よりも手続きに手間と時間がかかる
- 債権者と連帯保証人の合意が必要
- 最終的に競売になる可能性もある
住宅ローンを滞納している場合は、返済が滞ってから半年ほどで差し押さえ手続きに入り、その後競売の手続きがはじまります。最終的に裁判所による競売開始が決定されると、任意売却するのは難しいでしょう。任意売却自体は、競売の入札開始前までできますが、売却期間が短いほど家が売れる可能性が低くなります。任意売却を検討しているなら、金融機関への相談を早めに行い、認められたらすぐに売却活動に入ることが重要です。任意売却を専門、または得意としている不動産会社に債権者である金融機関との交渉を依頼することもできます。
任意売却した家の購入希望者が見つかったあとも、契約条件について金融機関から承諾を得る必要があります。一般的な仲介による売却とくらべると手間や時間がかかるため、早めの行動が求められます。
どうしても住宅ローンの残債を返済できないときでも、住宅ローンの返済期間を長くしてもらう、住宅ローンの借り換えをして金利を低くする、住まいを賃貸物件にするなど、任意売却を選ぶまえにいろいろな方法があります。任意売却は競売よりも高額になる可能性はあるものの、相場の8~9割ほどの売却価格となるため、最後の手段と考えておきましょう。
ローンが残った家を売る時の注意点や成功のコツ
住宅ローンが残った家を売るときに覚えておきたい、注意点や売却を成功させるためのコツを解説します。
不動産会社は慎重に決める
住宅ローンが残った家を売りたいときには、ローン残債を少しでも減らすためにできるだけ売却額を多くするのがポイントです。媒介契約を結ぶ不動産会社選びが、家を高く売れるかどうかに関連します。一社だけでなく、複数の不動産会社へ査定を依頼し、不動産会社の公式サイトなども参照にしながら担当エリアでの売買実績や見込み客の多い不動産会社を選びましょう。また、一括査定サイトなどの安易な手段は、無用な不動産会社からの営業連絡が多くかかってきてしまうなど、手間が煩雑となってしまうため避けておくことをおすすめします。
優秀な担当者のいる不動産会社を選ぶことも重要です。店舗への電話の際の応対や質問への回答スピード、知識量、住宅ローンの残債や状況などに応じて複数の方法を提案できるかなど担当者の対応で判断しましょう。
買い替えの場合は「売り先行」がおすすめ
買い替え・住み替えには住んでいる家を先に売ってから新しい家を買う「売り先行」、新しく住む家を先に買ってから、今の家を売る「買い先行」いずれかの方法を取ることになります。
売り先行のメリット
- 資金計画を立てやすい
- ダブルローンにならない
- 価格重視で売却活動ができる
買い先行のメリット
- 現在の住まいから新しい家への引っ越し1回で済む
- 仮住まいがいらない
- 売却するまで家を空け渡さなくても良いので、希望に合う住まいをゆっくり探せる
- 人気のある物件も確保できる
- 内覧に対応する必要がない
資金に余裕がある場合や、人気の物件を購入したいとき、転勤などで引越しなどに期限がある場合、できるだけ手間をかけたくないときは買い先行が選ばれることが多いです。一方、住宅ローンの残った家を売って買い替え・住み替えをするときには資金面でのメリットが大きい売り先行を選ぶと安心でしょう。仮住まいが必要、二度引越しが必要、家の内覧に来た人への対応が必要などのデメリットがありますが、先に家を売却するので資金を確保できる、ダブルローンにならない、売却期間を気にせず納得できる価格で家を売れるなどのメリットがあります。
買い先行の場合はつなぎ融資を含めて慎重に検討する
転勤にともなう引越しなど、現在の住まいに住める期限が決まっているときには、住宅ローンが残っている場合でも買い先行を選ぶことがあります。アンダーローンでも、家が売却できないと新しい家を購入する資金がない、ということがあるでしょう。その場合は「つなぎ融資」も選択肢となります。つなぎ融資とは、買い替え・住み替えの売却と購入のタイミングにズレがあり、資金が手元にないときに短い間だけ受けられる融資です。つなぎ融資によって買い替え・住み替え先の資金にして購入(買い先行)し、住宅ローンの残っている家が売れたら、売却したお金をつなぎ融資の返済に充てる方法があります。
ただし、つなぎ融資は買い替えローンよりも金利が高い場合が多い、手数料や保証料などがかかる、融資期間が半年~1年間と短いなどデメリットもあります。買い先行は売り先行よりも資金面で不安材料が多いため、住宅ローンの残っている家を売却するうえでの買い先行を選ぶときには、慎重に検討しましょう。
譲渡損失の繰り越し控除を覚えておこう
家を売ったときに損失(譲渡損失)が出ると、家の売却で手にしたお金に対して所得税や住民税などの税金はかかりません。さらに譲渡損失分をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)でき、その年に控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)できます。
買い替えや住み替えの場合は「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」、買い替えず住宅を売却した場合は「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」がそれぞれ適用されます。譲渡損失に関する特例は、アンダーローン、オーバーローン両方とも適用対象です。税制上の優遇措置となるため、確定申告のときに忘れずに手続きをしましょう。
▼家を売ることに関する確定申告については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ホームインスペクションを行う
ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)による専門業務です。目視によって診断士が、屋根、外壁、室内、小屋裏、床下など各所の劣化状態を所定の基準に基づいて診断します。専門家の見地から、不具合事象の有無や劣化状況のほか、改修すべき箇所や時期、おおよその費用などまでをまとめて見きわめ、アドバイスを行います。家を売る前にホームインスペクションを行うことで、問題のない家であることを証明でき、売却できる可能性が高くなるでしょう。また、ホームインスペクションの際に不具合が見つかれば修繕が必要ですが、売却前に修繕をしておくことで購入希望者や買主の信頼も得られます。
交渉は住宅ローン残債を下回らないようにする
家が売買に出されると、内部を見る「内覧」の希望者も増えます。具体的に購入を検討している人の中には、価格交渉(値引き交渉)を行ってくる人も当然いるでしょう。価格交渉は10万円単位で慎重に進め、必ず住宅ローン残債を下回らないようにするのが重要です。「早く売りたい」と焦って価格交渉を飲んでしまい、値引き価格で売却したところ住宅ローンが完済できなくなることもあります。
値引き後売却価格が住宅ローン残債を下回りそうな交渉は断りましょう。内覧者が多ければ断っても購入希望者は出てきます。一度断った人でも値引きなしで購入したい、と言ってくることもあります。
▼損しないための家を売るポイントについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
家の残債や状況に合わせた売却方法を選ぼう
住宅ローンの残った家を売る方法と、様々な手段の違い、売却を成功させるコツを解説しました。住宅ローンの残った家でも、手続きを踏めば売却はできます。
スムーズに売却を成功させるには、できるだけ家を高く売り、残った住宅ローンをどこまで減らせるかが重要です。売却後の生活も踏まえて、慎重に行動し家の売却を成功させましょう。